内省的な自己反省

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それは最後の楽園かもしれない―同人女が宝塚観劇デビューした話―

 

新入社員として忙殺されていた私は、自分にとっての宗教を探していた。

大好きだったはずのジャニーズのグループのコンサートはいつの間にか終わってしまっていたし、誰かを推すエネルギーも底を尽きていた。最近の趣味であった二次創作は自分の生き方を見つめ直しているうちに、何も思いつかなくなった。できることが増えた分、仕事の量は増える。上司と仲良くなった分、プライベートに踏み込まれた話をする機会も増えた。

「なまえさんはなんか(浮いた話とか)そういうのないの?」

この時私は、ぽっきりと何かが折れてしまったようだ。

 


結婚の話とか。

恋愛の話とか。

ただでさえ仕事の処理で頭がいっぱいなのに、そこに新たな問題、例えば私にとってのコンプレックスをぶつけるような話題を投げかけられることの多いこと。

宝塚に行こうと思ったのは、そんな社会への呪詛が煮詰まりに煮詰まった頃のことだった。

 


初めてお邪魔したのは宙組シャーロック・ホームズ。会社の最寄駅にポスターが貼ってあって、娘役さんのお顔に一目惚れして気になっていた公演。宝塚は男役が醍醐味なイメージがあるけれど、天王はるか海王みちるのどちらが好きかと訊かれたら迷わず海王みちると即答する私は、娘役のオタクになってもおかしくはないだろうと思っていた。

いつぶりかの日比谷は賑わっていて、眩しかった。

 


結論から言うと、とても楽しかった。とても満たされた。

まずアイリーン役の潤花さん。もうずっとオペラグラスで追ってしまう。吸い込まれてしまう。妖艶さと可憐さと、けれど健康的な表情。たまらない。お歌もお上手でした。そういえば、女声のファルセットを舞台でちゃんと聞いたのは初めてかもしれない。

それから、メアリー役の天彩峰里さん。彼女も超超超可愛い。そしてきゅひきゅひした反応がとってもキュート。美味しいところの持って行き方がお上手な娘役さんでした。ここのカップルの安定感、とても良かった。

それと、デリシュー。こちらも最高でした。キラキラとトンチキはジャニヲタ育ちの私にはたまらない。定番のクラシックを基にアレンジされたMNとダンスとスイーツ。目まぐるしく変わる舞台。花さんと峰里さんを双眼鏡でロックオンする私。別界隈で推しがいなくなってからは、双眼鏡はほとんど使ってこなかった。群舞や全体を見るのが好きだった。それでも、双眼鏡越しに見たい表情があった。私の中で、何かのスイッチが入った。

 


夢の世界にいるようだった。私の理想の女の子たちが、舞台の上で舞っていた。高貴で可愛らしい、女の子。理想の世界は日比谷に確かに存在した。

異性に消費されない女の子。清く正しく美しい女の子。女の子でいることを極めた女の子。女が憧れる女の子が、突然目の前に現れたのだ。

私はテニミュやジャニーズのような男の子のコンテンツが好きだ。でもそれ以上に女の子のコンテンツ(主に二次元)も大好き。なんならこっちの方が歴が長いし、積極的に動いていた。

それでも、なぜか実在する女の子のアイドルは好きになれなかった。理由はきっと、異性に消費される女の子を見るのが得意ではなかったから。異性に消費されることを前提に運営される体制が好きではなかったから。勿論、全てのグループがそのようなコンセプトであるとは限らないけれど、ずっと避けてきた。

だから宝塚という特殊なシステムの中で舞う高貴な娘役は、安心して推せる。観客に対して、娘役の、「女」という部分だけで売らせない、という姿勢があるからだろうか。とにかく女である私も安心して居心地よく「娘役」を応援できることが今はとっても嬉しい。私にとって宝塚の娘役は、最後の砦なのかもしれない。

 


ここ数週間はとにかく推しコンテンツを見つけるために色んなジャンルに触れてみたけれど、一番刺さったのは宝塚でした。何をしても吹っ飛ばなかった疲れが一瞬にして吹っ飛びました。久々に感じる観劇後の特有の気怠さが心地良い。よく眠れそうだ。

これから少しずつ、自分のペースでゆるゆるとオタクができればいいなあ。とりあえず新しいテレビを買えたらスカステに入会しようと思います。

明日からまた始まる呪詛だらけの社会生活も、これで頑張れそうだ。夢の世界にまた会えるその日まで、もう少し頑張ってみよう。

 

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