内省的な自己反省

文字で伝えたいこと Twitter→@aoyagi_mmk

月島蛍に思いを馳せる-ハイキューを観て-

※2020年9月27日 加筆修正

 

最近はハイキューにはまっている。ハイキューとは、高校のバレー部を舞台にした部活青春ものの漫画及びアニメのことだ。

友情・努力・勝利をコンセプトに掲げる週刊少年ジャンプを毛嫌いしていた私がまさかこんなにも王道な作品にはまるなんて。

白鳥沢戦まで一気に見て、これまたジャンプをこよなく愛する弟にドン引きされた。

 

その中でも月島蛍に思いを馳せずにはいられなかった。

 

月島蛍。烏野高校1年でチーム内1の長身。いつも騒がしい日向と影山、西谷と田中達を後ろから一歩引いたところで見ている..ように私には見えた。

地頭は良い。バレーは小学生のときからやっているからきっとセンスはある。

だけど、いつもどこか諦めているし、居残り練習もしない。「たかが部活」が口癖。

 

昔の私とそっくりだった。月島くんに対して自己投影するのは非常に申し訳ないが、ここで私の昔話にお付き合い願いたい。

 

私は高校の時にとある音楽系の部活に入部した。毎年全国大会に出るような強豪校だった。

幼少期からピアノを習っていたり、小学校では高校の部活でやっていたもの、中学では吹奏楽をやっていたりしたため音楽のセンスは普通の人よりはあったはずだ。

音楽に関わるものでは何でも「エース」のような存在だった。そして何よりも楽しかった。

 

しかし高校ではうまく行かなかった。私よりも断然上手い子が山ほどいた。

選抜メンバーで出る大会の校内のオーディションも悉く落ちた。

どれだけ練習しても上手くなれなかった。部活がつまらなくて苦痛だった。夏からの大会は全員舞台に乗れるけれど、私が立っていたって意味ないじゃん、とかなり冷めていた。

人生で初めての挫折だった。

そこからはまるで駄目だった。譜読みはできるだからそつなくこなす。

みんなが居残り練習する中さっさと帰る。

同期がワーワー楽しそうにしているのを横目に隅で冷めた目で見る私。最低だった。

楽しかったものが楽しくなくなる辛さや練習してもうまく行かないもどかしさももちろんあったが、一番辛かったのはクラス内の友人からの「〇〇部なんだよね!?頑張って!」という応援の声だった。

みんなには私がヒーローだかなんだかに見えるのかもしれないけれど

違う、そうじゃない、私は何もできない部員だよ、という言葉をぐっと飲みこんだ。自分のことを否定したかったけれど、そんなことをしてしまったら友人を裏切ってしまうから。

だから、月島蛍の気持ちも彼の兄である月島明光の気持ちもどちらも分かる。

光明くんはきっと一生懸命練習して、そこの部分は私と大幅に違うけれど、弟を裏切ってしまうから嘘を吐いたことは多分近い。

そして努力したって無駄、たかが部活 という月島蛍の価値観や彼の行動源泉と限りなく近いものが私にはあった。

 

そんな彼が奇跡を起こした。

「月の輪」のエピソードだ。

春高バレー出場をかけた決勝戦。相手はユースのアタッカーである牛島率いる強豪の白鳥沢学園高校。月島くんは持ち前の冷静さで頭脳を使い、試合中に試行錯誤を繰り返しながら、ついに牛島のスパイクをドシャットした。この時初めて彼は喜びを叫んで表現した。

彼がバレーに「ハマった」瞬間だった。

 

彼が変わるきっかけは大会前の合宿だった。

音駒の黒尾、梟谷の木兎、赤葦との自主練で、木兎は月島くんに「その瞬間が来たら それがお前がバレーに ハマる瞬間だ」と言った。この言葉はきっと月島の頭の片隅にずっとあったのだろう。

 

月島くんに対してエゴのない言葉をかけてくれる存在がいること、練習に自然と巻き込んでくれる仲間がいることは、彼にとって救いだっただろう。

そして彼のことを見捨てず信じてくれた烏野のメンバーや兄の存在も。

もうこれを考えただけで涙が出てくる。そして何よりも自分に対して諦めなかった月島くん。

熱血タイプのメンバーが多い中で、冷静に、着実に才能の牙を剥く月島が、本当に格好よくて。

月島くんの口から「まだコートにいたい」という言葉が出た時には自分事のように嬉しかった。

 

彼を見たことによって、部活をやりきれなかった己の地縛霊が解放される感覚を得たのだ。

 

私は部活で扱ったものの「ハマった」瞬間を知らないまま引退してしまった。未だに分からない。多分一生分からないまま死ぬのだろう。

 

私は部活に関しては諦めて完全に外部との接触を断ってしまったが、私ももしかしたら出会いによって変われる瞬間はあったのかもしれない、と考えてしまった。他力本願な時点で変われないけれど。だから動くしかないのだと、今の私には分かる。

 

 

そして明光くんの

「高校であんなだったからだよ」

という言葉にも酷いほど救われた。高校で音楽を思う存分にやりきれなかった。だけど楽しさを知ってしまっている。ならばやり切ったと思うまでやればいい。

そうか、そんな生き方もあるのか。目から鱗で、じゃあ私も原点であるピアノを再開しよう...となって今に至る。 別の記事にも書いたけれど、この発想の転換のお陰でこの挫折を挫折と認めることができて、立ち直れて、就活の自己PRに昇華できた。わたしは月島兄弟に、ハイキューに救われすぎている。

 

私は少年漫画が苦手だった。特にスポーツもの。

こんなことあるわけないじゃん、青春なんてこんな甘くない、という印象を抱いてしまうからだ。

しかし私は今、ハイキューと言う名の青春ファンタジーに、どうしようもなく救われている。

 

一つ一つの出会いを大切にすることによって、自分の中の何かが変わるかもしれない。集団で何かをすることが楽しくなるかもしれない。社会に対して薄氷のような期待を胸に込め、今日を生きる。

 

 

 

 

余談

実は私は小学生のときにジュニアバレーをやっていたのだが、背番号が月島くんと同じで運命を感じてしまった。

そしてピンサー経験者でもあるので月島くんが山口くんに対して言う「ナイサー1本」がどうしようもなく好きだった。緊張する場面での信頼しているメンバーからの掛け声ってね、安心するんだよ。山口くんのためにボールを繋げる月島、アツすぎる。

 

あと対戦相手校である白鳥沢学園にはこれまた私の感情を掻き乱す男・白布賢二郎がいるので、彼もまたいつか触れたいところ。

 

 

 

 

おしまい