内省的な自己反省

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会えるのなら、また会いたい――One Last Kiss  考察と解釈

 

こんばんは。先日ついに念願のシン・エヴァンゲリオン劇場版を観てきました。エヴァは私のオタクの原点の一つであるので、正直終わってしまって寂しい。いろいろと思うことはあるけれど!!!今回は主題歌を紐解いていきます。
それというのも今回の映画、あまりにもマリがダークホースで。マリの夢女になって劇場を後にしてから主題歌を聴いたらあまりにもマリの視点での曲だったので、マリ視点で考察・解釈していきます。百合夢女の強めの幻覚、ネタバレ&貞本エヴァ(漫画版)に触れてます。

 

”初めてのルーブルは なんてことはなかったわ”
口調が女性詞であることからあれ?と。貞本エヴァ14巻のマリのエピソードを読んでほぼ確信しました。これは女→女の視点でも読める、と。ルーブル美術館があるのはパリ、冒頭マリが戦っていたのもパリです。そこでルーブルに寄ったのかな、それがきっかけで何かを思い出したのかもしれません。

”私だけのモナリザ もうとっくに出会ってたから”
モナリザ はマリにとってのユイなんですね。一等ものの美術品を目の前にしてもなお揺らぐことのないマリの中のユイ。どれだけマリのことを魅了したのでしょうか。

”初めてあなたを見た あの日動き出した歯車 止められない喪失の予感”
16歳で飛び級京都大学に入学したマリ。エリート街道まっしぐらで、向かうところ敵無し状態だったと考えられます。そんな中で出会ったユイ。
マリ曰く「かわいい」「頭脳明晰」「優しすぎる」「すべてが憎らしい」。どう足掻いても適わない。
マリにとっての挫折のきっかけであるかもしれない一方で、止まらないユイへの劣情。憧れなのか、執着なのか。そこにあるのは天才・マリではなく、等身大の16歳のマリ。ユイとの出会いがきっかけで、動き出した彼女の青春。

”もういっぱいあるけど もう一つ増やしましょう
(Can you give me one last kiss?)
忘れたくないこと”
大学ではユイ・キョウコ・マリで結構一緒に動いてた…のかな?きっと様々な出来事があって、全部忘れられない出来事だったのでしょう。
Can you~?のくだりは、映画内でのアスカとの距離感から考えるに、そのような関係を求めていたのではないのでしょうか。

"Oh oh oh…
忘れたくないこと
I love you more than you’ll ever know”

ここでも「忘れたくないこと」が出てきます。サビの一部ですし、相当重要なメッセージであることが伺えます。
英文を訳します。you’ll ever knowは「とっても、ものすごく」を意味します。
つまり、「私はものすごくあなたを愛しています」になりますね。
「忘れくないこと/私はものすごくあなたを愛しています」
ここが後に重要になっていきます。

2番のAメロに進みましょう。

”「写真は苦手なんだ」 でもそんなものはいらないわ
あなたが焼きついたまま 私の心のプロジェクター
誰かを求めることは 即ち傷付くことだった”

「写真は苦手なんだ」マリ達の間で写真が苦手そうなのは誰だろうと考えた時に、真っ先に思い浮かんだのがゲンドウ。ユイとゲンドウが並んで写真を撮ってンもらっているところをマリが見ている、という図を連想しました。
二人が写っている写真なんていらない。だってあたしの心にあなたの姿は焼きついているもの。そう寂しくないふりをするのは、マリの強がりでしょうか。
誰かを~は、映画でゲンドウも言及していましたね。ゲンドウもマリも、傷付くことを知ったきっかけはユイ。彼らにとってのユイはただならぬ存在。

"Oh, can you give me one last kiss?
燃えるようなキスをしよう
忘れたくても忘れられないほど”

2サビです。ここで1サビの「忘れたくないこと」の答えが出てきます。
「燃えるようなキスをし」たい、という本性が見えてきました。
「忘れたい」、「忘れる」という”事象”に対する否定の願望・意思を「忘れられない」、「忘れる」という”能力”に対する不可能を用いて否定していきます。つまり、「したくない」ではなく「できない」領域に達するほどのキスがしたい。そう読み取ることができます。ユイとゲンドウの関係を分かっていても。背徳的ですね。映画を見ても思ったけれど、マリはそういう距離の詰め方がうまい。
忘れたくない(1サビ)。だから、忘れることができないほどのキスがしたい(2サビ)。彼女の切実な思いが表れています。そしてその直後に再度"I love you more than you’ll ever know”。

”もう分かっているよ この世の終わりでも 年をとっても 忘れられない人”

この世の終わりはサードでしょうか。今度こそマリ達の命が危ない。
年をとっても、ではマリは映画の中では(漫画の時間軸と合わせると)不老であることが考えられます。季節は巡る。でも見た目は老いてない。一説によると彼女も使徒であると言われていますが、そうであるにしろないにしろ、見た目はユイに言われた「女子高生みたい」のまま。だからこそ、余計にあの人のことが忘れられない。それが世界が終わろうと、年齢を重ねようとも。

"Oh oh oh…
忘れられない人
Oh oh oh…
I love you more than you'll ever know"

「忘れられないこと」から「忘れられない人」に変わっています。
「もう分かっているよ」というのは、もう二度と会えないことを分かっている、ということでしょうか。二度と会えない。だから「忘れられないこと」ができないのも分かっている。もう二度と会えない人のことを歌った曲であると言えます。

”吹いていった風の後を 追いかけた 眩しい午後”
マリにとって、いやゲンドウを含む関係者にとってユイは嵐のような存在であったと考えられます。ユイを失った後にゲンドウがあんな計画を初めてしまうくらいには、マリが上記の気持ちを抱くくらいには、色んな人の心を良くも悪くもかき乱した。そんな彼女の面影が残る二人の子――シンジくんの後をついていくマリの姿が、私には見えました。


【結局、マリは何者だったのか】
マリは私の中では「マグダラのマリア」と解釈しています。ざっくり言うと、イエスを産んだ聖母マリアと違ってイエスが神になってから初めて会った人間、証人 みたいな存在です。映画でもシンジくんが解放されてから初めて会ったのはマリでした。そう考えるとユイは聖母マリアにあたりますね。にしても最後の最後に謎を残す女、好きしかない。

そんなわけで!!!私の考察と解釈は以上です。エヴァ宇多田ヒカルも、毎回沢山の解釈の幅を与えてくれるので本当に楽しい…いや楽しかったです。でもきっとこれからも人生の色んなところでエヴァの解釈を深めていくんじゃないかな。物心ついた頃から好きなアニメです、そう簡単に抜け出せそうにありませんね。
学生生活の終わりという節目にこの作品の完結を見届けることができてよかった。ありがとう、そしておめでとう。庵野監督をはじめとする関係者に最大の拍手と敬意を。


参考文献
新世紀エヴァンゲリオン(14) 貞本義行・カラー 角川コミックス・エース